国家間の争いに選手生命を絶たれた悲劇のヒーロー


カルロス・ロイテマンが昨日、亡くなられました。

 僕らがファンとしてF1に夢中になった頃の、ニキ・ラウダやジェームス・ハント、ジョディ・シェクター等と並んでのスーパースターでした。
 特に1976年のラウダの事故後のフェラーリへの移籍に端を発する、フェラーリとラウダ間に芽生えた確執と不信感の原因にもなったドライバーであり、しかしそんな事に我関せずの態度で黙々とタイトルを目指す孤高のヒーローとして、82年序盤までF1の第一線で活躍しました。

 一般的には情熱的と言われるラテン圏の中で、アルゼンチン人は〝青い血が流れている〟と言われるほど沈着冷静な人種で、他のラテン民族とは一線を介す独特な気風を持った人種と言われ、ロイテマンのメカを務めた中矢龍二氏は『記憶力とアタマの良さはズバ抜けていた』と語っておりました。また賞金を獲得すると担当してくれたメカにボーナスを出してくれる等、〝気配りが凄かった〟とも言っておりました。

 

 『今年こそタイトル』と臨んだ82年。

 イギリスとアルゼンチンの間で勃発したフォークランド紛争で、英国チームに乗っていた為、アルゼンチンへ戻る様、政府から言われ引退を余儀無くされ帰国。その後、政治家になりサンタフェ州の知事にまで上り詰めました。


 最高のシーズンになるはずの年に、まさかの国家間の紛争…。不運と言えば不運なドライバーではありましたが、素晴らしい活躍と共に、その気品すら感じる英雄の生涯の活躍を脳裏に呼び起こし、献盃。